今月が旬の木【カリン】

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今年は11月が旬の木をご紹介致します。
今回は【カリン】についてお話致します。
カリンの花言葉は、「唯一の恋」。

【カリンとは・・・】
・中国を原産とするバラ科の落葉高木で、甲信越地方や東北地方では庭木として数多く植栽されている。日本へ渡来した時期や経緯は不明だが、寛永11年(1634年)頃、長崎に移入されたという記録が残る。

・春にはボケやカイドウに似た花を咲かせ、初夏の新緑や秋の紅葉が美しく、冬には黄色い果実が冬枯れの庭を彩るため、古くから寺院などの庭木や街路樹に用いられる。また、樹齢と共に剥がれ落ちる樹皮にも観賞価値があり、実のなる盆栽としても知られる。

・カリンの開花は3~5月で、葉の展開とほぼ同時。淡いピンク色の花が短枝の上部に一輪ずつ咲く。直径2~3センチの五弁花で香りはほとんどない。ボケの花に比べると花弁が落ちやすく、色合いも淡いため見栄えがしないとされるが、新緑の淡い緑とのコントラストは美しい。

・雌雄同株で花には雄花と両性花があり、雄花には雄しべが20本、両性花には雌しべ5本と雄しべ20本がある。両性花の後にできる果実(正確には偽果)は長さ10~15センチの扁平した球形。でき始めは緑色だが、10月頃に光沢のある黄色に熟す。表面はデコボコが多く、内部には黒褐色の種子が多数ある。

・果実は重さ200~500gにもなるが枝はしならず、遠目からはレモンが枝に突き刺さっているように見える。見た目はおいしそうだが木質で硬い上、酸味、渋みともに強く、そのままでは食べられない。香りを楽しむ場合は、できるだけ完熟させてから収穫すると香りが強くなる。

・カリンの実は砂糖漬け、ジャム、ゼリー、カリン酒として使うのが一般的。のど飴や「加勢以多(かせいた)」などの製菓用にも使われる。江戸時代に貝原益軒が記した「大和本草」には、未熟なカキ100個の中にカリン1個を入れておくと、カキがよく熟すと記される。

・カリンの果実はボケの果実とともに生薬「木瓜」となる。輪切りにしたものを陰干しし、これを煎じて飲めば痰や咳止め、整腸、利尿、鎮痛に効果があるとされる。中国では古くから「アンズ一益、ナシ二益、カリン三益」といわれ、カリンの有用性が語り継がれている。

・葉は長さ4~8センチ、幅3~5センチの楕円形で枝から互い違いに生じる。硬質で先端が尖り、縁には細かなギザギザがある。表面は光沢のある濃緑色で新芽は赤みを帯び、裏面には始め綿毛があるが、後に脱落する。

・幹は直立し、直径は最大で30センチほどになるが、株立ち状になりやすく、双幹、三幹に仕立てたものもある。樹皮は滑らかだが樹齢と共に樹皮が鱗状に剥がれ落ち、緑がかった褐色のまだら模様になる。もっぱら観賞用の木であり、独特の枝振りから「実もの盆栽の王様」と称されるが、稀に家具材、床柱、バイオリンの弓に使われる。

・カリンの木が寺院に多いのは、かつてインド中部に住んでいた元バラモン教徒の「庵羅女」が仏教へ転向した際、釈迦に「庵羅樹」の樹林を寄進したことにちなむ。庵羅樹はトウダイグサ科のアムラの木だが、日本ではこれをカリンと錯誤し、カリンを敬ってきた。

・カリンという名は、本種の木目が東南アジアを原産とするマメ科の花櫚(=インドシタン)に似ることによる。漢字表記は「花梨」が一般的になりつつあり本項もそれに倣うが、本来の漢語は「榠樝(めいき)」。別名のカラナシ(唐梨)やテンジクナシ(天竺梨)は大陸由来のナシに似た実をつける木、キボケ(木木瓜)は、低木にとどまるクサボケに対するものとされる。

【カリンの育て方のポイント】
・比較的涼しい気候を好み、東北や信州地方での栽培が多い。

・日向かつ水はけの良い場所を好む。植穴は深く掘り、腐葉土や堆肥を漉き込むのがよい。

・花木としては花が少ないが、実はなりやすい。自家受粉で結実するが、他家受粉の方が実が落ちにくい。実の成りを重視する場合は、複数のカリンを並べて植栽するとなおよい。繁殖は実生と挿し木による。

・枝は細めで上向きに伸び、樹形は狭い円錐状となる。時折街路樹として使われるのは、これによるが、丈夫な性質を持っており、剪定にも耐える。

・花芽は枝先にできるため、下手に切り戻すと花や実ができない。剪定の適期は冬季で、大枝を元から切除するような剪定が望ましい。若い枝には棘があるため注意したい。

・放任すると枝葉が繁茂し、通気性や採光性が下がればハマキムシ、アブラムシ、カイガラムシ、ナシヒメシンクイムシ、コウモリガ 赤星病など病害虫の被害に遭いやすくなる。

【カリンとマルメロの見分け方】
・カリンとマルメロは似たような果実ができるため、しばし混同されるが、カリンの樹皮は上の写真のように剥がれ落ちる特徴を持つ。また、マルメロの実はほぼ球形で表面にやや粘着性の毛がある。

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